2010年11月10日水曜日

夏目漱石と戦争

 私の読書歴の中で一番気になる作家と言えば、「夏目漱石」である。私は生意気にも中学生のうちに彼の全集を読んだ。その当時はただ面白いという感想しか残っていない。特に「坊ちゃん」「我輩は猫である」は面白かった。他の著書は中学生には少々背伸びして読んでいた気がする。その後「夏目漱石」に関する評論本が出ると必ず購入して読んできた。
 最近、「夏目漱石と戦争」という本が「平凡社新書」から出された。
夏目漱石がこんなにも戦争というものに関心も持ちながら、作家活動をしてきたのかと驚くばかりである。漱石は1888年第一高等中学の時に英作文で軍事教練について次のように書いている。「諸君、軍事教練は私にとって辛すぎる訓練であります。それは、教練が私の意志に反して強制的に訓練を課すという理由によるものであります。私は軍事教練という名前を聞いただけで虫唾が走ります。軍事教練において、われわれは、形こそ人間でも、鈍感な動物か、機械的な道具のごとく遇されるのであります。われわれは、奴隷か犬のように扱われるのであります。しかしながら、いったい誰が、犬のように卑屈に尻尾を振り、手を舐めるでありましょうか。」と書いています。
 明治の兵役義務がある時代に、しかも15、6歳の若者が書いているのである。そんな背景を知って漱石の本を読むと、又違った読後感になるのではなかろうか。

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