2011年2月22日火曜日

歌枕

 歌枕とは?と問われてすぐに答えられる人は数少ないと思う。つい最近に購入した本「京都うた紀行」・・近現代の歌枕を訪ねて・・に次のように書かれている。「歌枕とは、その地を冠して詠まれた古歌およびその場所をさす」
 著者の河野裕子氏は昨年の8月に乳がんでなくなった。死を受け入れながら詠んだ歌はなんと研ぎ澄まされていることだろうか。そんな彼女が夫「永田和弘」氏とともに、50箇所の歌枕を訪ねての紀行文である。
 50の歌枕の中で、「寂光院」を訪ねた時に詠まれた歌

みほとけよ祈らせ給へあまりにも短きこの世を過ぎゆくわれに   河野裕子

 忙しさの中で、ふと自分を見直すには最適の本である。

2011年2月14日月曜日

本という世界

 今、本の世界は大きな転換期に来ていることは、誰しも認めるところである。これから電子書籍がどれだけのスピードで普及するか予測することは困難であるが、将来的には「昔は本は紙でできていて、こんなに高かったのだよ」と言う時代がくるかもしれない。
 紙で本を読み、考えた世代が少なくなる事と平行して、変化していくのであろう。なぜかと言えば、若い世代は圧倒的に本を読まなくなってきているからだ。本を読むと言うことは、ただ単に目で字を追うだけではない。本の形、想定、段落・・等々が重なりあって想像し、理解され、定着するものである。
 将来的には、自分にあったバリエーションある「電子端末」が出てくるのであろう。大きさ、色、重さ、感触等々・・・
 もう少し安くなれば私も購入するかもしれない。
 しばらく、電子書籍の進化から目が離せないことは間違いない。

2011年2月8日火曜日

丸谷才一

丸谷才一という「小説家」「評論家」の名前を知っている人は少ないと思う。ましてや彼の本を読んだ人はもっと少ないであろう。彼の評論集「星のあいびき」の中に以下のような内容の文章があたので紹介する20世紀の特徴として以下の2点を挙げている。

20世紀は戦争と革命の世紀だと言われている。二つの世界大戦、イタリアのエチオピア侵略、日本の中国侵略、朝鮮戦争、そして世紀末には湾岸戦争があった。別格として、冷戦という戦争もあった。20世紀の100年間において、戦争らしい戦争が無かったのは、1920年代だけだったと言う学者もいるくらいだ。革命の方もすごかった。ロシア革命、スペイン内乱、中国革命。この戦争と革命の世紀において実に多くの人が殺された。あるアメリカの学者によると、1916年から1965年にかけて国際問の、国と国との戦争が74回ある。その74の戦争で死んだ人、死者の数を一番多い順に番付にすると、二つの世界大戦、1937年から1939年までの日本の対中国戦争、それから朝鮮戦争、この四つの戦争でそれぞれ百万人以上の人間が戦場で亡くなつたと言われている。
暗澹たる20世紀が誇りうるほんの僅かの事柄の一つが、モーツァルトの音楽をそれにふさわしい栄光の位置に押し上げたということである。べートーヴェソが圧倒的に尊敬され、モーツァルトは影が薄かつた。19世紀末にはワグナーが人気を博し、そのあおりででモーツァルトの評判はそれほどではなかったのだ。
もう一つは、儒者たちがしきりに「源氏物語」を攻撃していたが、国学者たちが、非常に頑張って「源氏物語」を応援した。儒教的な考え方が明治になつても盛んで、森鴎外、夏目漱石、この二人はどちらも明治時代最高の文学の目利きなんであるが、両人とも「源氏物語」に対して冷淡であった。森鴎外は「源氏は悪文である」なんて言っている。夏目漱石は『源氏物語』を問題にしていない。(敗戦とともに、軍人が威張るこができなくなり、皇室関係のタブーが解けた時に、「源氏物語」は天下晴れて日本文学最高の長篇小説と言うことになったのである

今の我々には、両方とも簡単に聞けたり、読んだりできる電子端末がある。「モーツァルト」「源氏物語」に挑戦してみては如何かな。

2011年2月1日火曜日

自由貿易は民主主義を滅ぼす

こんなタイトルにびっくりして本を購入した。なぜそうなのか?以下の著者「E・トッド」は以下のように述べている。
多くの人が、「経済的自由」と「政治的な自由」を混同して考える傾向にあります。「自由貿易と政治的な自由は同じであり、それに対して保護主義は、閉ざされたものであるから自由ではない・民主主義ではない」と。しかし歴史を振り返れば、それは全くの間違いです。保護主義の方がむしろ民主主義を助長させ、社会的な平等という価値に基づいた経済政策を行なってきたという歴史があるからです。
イギリスは、十七世紀、十八世紀に経済的に発展しました。当時、クロムウェルの下で、保護主義的な経済政策が行われていたわけですが、同時に民主主義も進展します。それに対し、ビクトリア王朝期には、むしろ不平等が拡大しました。この時とられた政策は、自由貿易です。なぜなら自由貿易は不平等、格差を拡大するものだからです。したがって、自由貿易体制を長期に続ければ、必ず社会の不平等は拡大し、非常に優遇された超富裕層が社会を支配していくことになる。
今のアメリカのその典型だと考える。又、今の日本にに対しても「示唆的な言葉である。民主党政権は今躍起になって、TPP(別名:環太平洋経済協定)に参加しようとしている。民主主義に逆行する危険な動きである。