2011年2月8日火曜日

丸谷才一

丸谷才一という「小説家」「評論家」の名前を知っている人は少ないと思う。ましてや彼の本を読んだ人はもっと少ないであろう。彼の評論集「星のあいびき」の中に以下のような内容の文章があたので紹介する20世紀の特徴として以下の2点を挙げている。

20世紀は戦争と革命の世紀だと言われている。二つの世界大戦、イタリアのエチオピア侵略、日本の中国侵略、朝鮮戦争、そして世紀末には湾岸戦争があった。別格として、冷戦という戦争もあった。20世紀の100年間において、戦争らしい戦争が無かったのは、1920年代だけだったと言う学者もいるくらいだ。革命の方もすごかった。ロシア革命、スペイン内乱、中国革命。この戦争と革命の世紀において実に多くの人が殺された。あるアメリカの学者によると、1916年から1965年にかけて国際問の、国と国との戦争が74回ある。その74の戦争で死んだ人、死者の数を一番多い順に番付にすると、二つの世界大戦、1937年から1939年までの日本の対中国戦争、それから朝鮮戦争、この四つの戦争でそれぞれ百万人以上の人間が戦場で亡くなつたと言われている。
暗澹たる20世紀が誇りうるほんの僅かの事柄の一つが、モーツァルトの音楽をそれにふさわしい栄光の位置に押し上げたということである。べートーヴェソが圧倒的に尊敬され、モーツァルトは影が薄かつた。19世紀末にはワグナーが人気を博し、そのあおりででモーツァルトの評判はそれほどではなかったのだ。
もう一つは、儒者たちがしきりに「源氏物語」を攻撃していたが、国学者たちが、非常に頑張って「源氏物語」を応援した。儒教的な考え方が明治になつても盛んで、森鴎外、夏目漱石、この二人はどちらも明治時代最高の文学の目利きなんであるが、両人とも「源氏物語」に対して冷淡であった。森鴎外は「源氏は悪文である」なんて言っている。夏目漱石は『源氏物語』を問題にしていない。(敗戦とともに、軍人が威張るこができなくなり、皇室関係のタブーが解けた時に、「源氏物語」は天下晴れて日本文学最高の長篇小説と言うことになったのである

今の我々には、両方とも簡単に聞けたり、読んだりできる電子端末がある。「モーツァルト」「源氏物語」に挑戦してみては如何かな。

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