2011年5月10日火曜日

高木仁三郎

高木仁三郎という人は10年以上前になくなっているが、阪神大震災の後、以下のような論文(概要)を日本物理学会誌に載せていた。今回の震災を予言しているような内容である。ぜひ覚えておきたい名前である。

原発の非常時対策は?
耐震設計に関連して私の見方をごく概略的に述べてきたが、原発の地震に対する安全性について大きな疑問・不安が残る。最大限控えめにみても「原発は地震に対して大丈夫」という言い方は、上述のような疑問や不確かさに対して、すべてを楽観的に解釈した場合にのみ成り立つものだろう。
しかし、そんな楽観論の積み重ねの上に築いてきた砂上の楼閣が音を立てて崩れたのが阪神大震災の実際ではなかったか。その教訓に学ぶとすれば「安全神話は成り立たない」ことを前提にして、原発が地震に襲われて損傷を受けた場合の対策を考えておくのが現実的ではないだろうか。
国や電力事業者は「原発は地震で壊れない」ことを前提にしてしまっているため、そこから先に一歩も進まず、地震時の緊急対策を考えようとしない。たとえば、静岡県による東海大地震の被害想定に浜岡原発が事故を起こすことは想定されていない。逆に浜岡原発の防災対策では地震で各種の動きや体制がとれなくなるようなことはいっさい前提としていない。ただでさえ地震時の防災対策にも、原発事故時の緊急対策にも不備が指摘されているから、これらが重なったら対応は不可能になるだろう。
この論文は主に原発と地震に関して問題点を指摘し、今後の議論への材料とすることを目的としているが、若干の提案をしておけば、まず一番気になる老朽化原発(東海,敦賀1,美浜1,福島1が運転開始25年以上になる)に関して、どのような原則で、いつ廃炉にしていくかについて、具体的に議論すべき時に来ていると思う。とくにこのところの東海原発の稼働状況は悪く、いつ廃炉にしてもおかしくないと考えるが、現実には廃炉のための基準といったものもなく、ずるずると故障続きのまま運転が継続されている。さらに、防災体制についても、地震を想定した現実的な原発防災を今すぐにでも具体的に検討すべきだと思う。  
その中で、たとえば、事故時の避難場所の確保を建物の耐震性も併せて考えることや、現在地域の保健所に置かれているだけのヨウ素剤を各戸配布することなども検討することを提案したい。
他の緊急事態は?
阪神大震災は、核施設の他の緊急事態への備えのなさについても大きな警告を発しているように思われる。考えられる事態とは、たとえば、原発や核燃料施設が通常兵器などで攻撃されたとき、核施設に飛行機が墜落したとき、地震とともに津波に襲われたとき、地域をおおうような大火に襲われたときなど、さまざまなことがあげられる。それらの時には、地震に関して議論してきたようなことが、多かれ少なかれ当てはまる。これまでにもそれらの問題の指摘はあったが、そのような事態を想定して原発の安全や防災対策を論じることは、「想定不適当」とか「ためにする論議」として避けられてきた。しかし,最近,阪神大震災だけでなく、世界のさまざまな状況をみるにつけ、考えうるあらゆる想定をして対策を考えていくことが、むしろ冷静で現実的な態度と思われる。

このような論文も無視され、利益誘導でその後どんどん原発が増えていったのである。

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