2011年9月20日火曜日

9.11から10年

野坂昭如氏の「七転び八起き」の連載が、毎日新聞に開始されて2年以上が経つ。彼は脳卒中で倒れ、しばらく病気療養していた。リハビリにより、かなり回復している。奥さんの口述筆記により、毎週冴えた文章を読者に提供している。「今回は9・11から10年」というタイトルで書かれている。
以下、かなり短くまとめてみた。
アメリカ同時多発テロから10年経った。あの時、ぼくはテレビを観ていた。ワールドトレードセンターに飛行機が突っ込み、やがて炎、煙とともにビルが崩壊。衝撃を受けながら、一部始終観ていた。これを機にアメリカはイラク戦争にのめり込んでいく。10年。3652日。一体あれからアメリカは変わったのか。あのテロは世界を変えたと言われる。確かにこれまでの戦争とは違った。これまでの戦争は国対国というカタチだった。ブッシュ大統領は、911直後、「これは戦争だ」と宣告。しかし戦争というにしては敵としての国家は無かった。テロは突きつめていえば、個人の問題に属する。国家対国家の場合は、会話が成立する。両国にとって最悪の事態を避けるべく努力も可能だろう。しかしテロの場合それは出来ない。アメリカは911以後、悲しみに暮れた。そして国を挙げて一丸となって報復に向かう。打倒フセイン、ウサマ・ビンラディン。テロ組織アルカイダに立ち向かうべく、アメリカの大義が整った。アメリカの言う大義という名目の陰に、石油という利権が透けて見える。つまりアメリカは自国の利益で動く。これを欧米は冷静に見極めつつ、我が身にふりかかる火の粉だけふり払い、冷ややかに眺める。
アメリカは世界の警察国家を自任し、しかしそれは叶わぬまま、それでも世界を牛耳ろうとあちこち手や口を出す。これまでもアメリカの手段については、目に余ると言われてきた。自国の民主主義を旗印に軍事力を強化。経済力を背景に超大国アメリカの価値観を押し付け、それぞれの特徴をおしひしいできた。
この時、小泉純一郎はわが国の憲法を曲げて解釈、自衛隊をイラクに派兵する論拠とした。こうして日本は、アメリカの報復戦争に追随、というより、はっきり加担した。過去のことではない。あの暴挙は、今後の日本を大きく変える危険がある。
日本は戦後他国と戦火を交えることのないよう慎重に歩んできた。しかし徐々に歯止めが失われつつある。先日ワシントンで前原誠司・民主党政調会長は自衛隊の海外派遣の際の武器使用基準を綬和すべきだと述べた。さらに武器輸出三原則の見直しにも触れた。戦後日本が守ってきた大原則を党内はおろか世間の論議もないまま、民意を無視した形でキナ臭い方向へ向かわせようとしている。これは具体的に危ない兆候。もう少し世間は敏感になるべきだ。面倒臭がらず、何にしたって考えること。同時多発テロを含め、軍事力では何も解決出来ないことは立証されている。
何事も面倒くされないことが大事である。簡単にズバ、ズバ結論を出すことはその場面では気持ちがいいが、決していい解決法ではない。特に、国と国との関係ではなおさらだ。

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