2012年11月14日水曜日

悪への怒り


 何度も書くが、「本当のこと」を言えない日本の新聞の「おわりに」の部分を紹介して、この本の紹介を今回で最後にしたい。
本書のなかで、私は日本の新聞について厳しい指摘をいくつもした。
誤解してほしくないのだが、日本のメディア批判をしたかったわけでも、日本よりアメリカのメディアが優れていると言いたかったわけでもない。健全なジャーナリズムを機能させるにはどうしたらいいのか。日本でその議論を起こすために、記者クラブメディアが抱える問題点を具体的に提示したつもりだ。
記者クラブメディアの本当の被害者は、私たち海外メディアの記者ではない。日本の雑誌・ネットメディア、フリーランスの記者たちは自由な取材を阻害されている。大手メディァの若い記者は、ジャーナリズムへの志があってもやりたい取材ができない。だが、一番の被害者は、日本の民主主義そのものだ。「権力の監視」という本来の役割を果たしていない記者クラブメディアは、権力への正しい批判ができていない。
福島第一原発事故の教訓が活かされぬまま、再稼働が決定された福井県の大飯原発がいい例だ。抜本的な対策が取られていないのに、「電力の安定供給」という錦の御旗のもと、野田総理は再稼働を推し進めた。もし再び大地震や津波に襲われたとき、福島と同じような事故が起きないと言えるのか。なぜ日本の大手メディアはもっと怒りの声を上げないのだろう。報道を見ていると、批判はしていてもどこか他人事だ。メディアが権力を批判し、社会に議論を起こさなければ、健全な民主主義は絶対に生まれない。
日本は、私にとってもはや「他人の国」ではない。長く住み続けるなかで、日本への強い愛着が生まれた。私は日本人が好きだし、日本人の友だちも数えきれないほどいる。第二の故郷・日本で、私はこれからも「a sense of moral outrage」(悪への怒り)を忘れずに仕事をしていきたい。1人の良きジャーナリストであり続けたい。そして近い将来、「a sense of moral outrage」を胸に記者クラブを飛び出した日本人記者たちとしのぎを削りながら、この社会を少しでも良くする記事を書いていきたいと願っている。
私達に出来ることは、いい記事を読んだら、感想なりを、色んなメディアで紹介することだと考える。たとえば、「ツイッター」「ブログ」「フェエイスブック」等で発信することではなかろうか。その事が、記者や、ジャーナリストを励まし、又いい記事を書いてくれることに繋がる。

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