2012年11月5日月曜日

アクセス・ジャーナリズム



「本当のことを伝えない日本の新聞」の中で、9・11へのことが書いてある部分を紹介する。
9・11で大きな過ちを犯したニューヨーク・タイムズ
本書を通じて、私は日本のメディアについて一貫して厳しい意見を述べてきた。そんな私も、アメリカのジャーナリズムがすべて正しいと強弁するつもりはまったくない。アメリカのジャーナリズムが重大な過ちを犯したのは、つい最近のことだ。
2001911日、あの恐るべき同時多発テロがアメリカを襲った。ニューヨークでは世界貿易センタービルのツインタワーが根こそぎ破壊され、ペンタゴン(アメリカ国防総省)までテロ攻撃に遭ってしまった。この国家存亡の危機を乗り越えるため、911後のアメリカのジャーナリズムはブッシュ政権をあからさまに批判しなくなった。
911同時多発テロを受けて、アメリカは2003320日にイラク戦争を開戦している。その根拠となったのが、「イラクが大量破壊兵器を隠し持っている」という情報だった。アメリカは圧倒的な軍事力をもってイラクへ攻めこみ、同年52日にブッシュ大統領は早々に「終結宣言」を出している。正体をくらませていたフセイン大統領も追跡の末、200312月に見つけ出し、身柄を確保した(20061230日にイラク政府に引き渡され、死刑が執行されている)
イラク戦争開戦において、アメリカの主要メディアはブッシュ政権の決断を後押しした。それがのちに大きな誤りだったことに気づくのだが、国家的危機を前にして国民のみならず、権力の監視を託されているはずのメディアも冷静さを失ってしまった。
200298日、ニューヨーク・タイムズのジュディス・ミラー記者がフセイン大統領の核開発疑惑を報じる。チエイニー副大統領をはじめとするアメリカ政府は、この報道を開戦の理屈づけに利用したと言える。「イラクは大量破壊兵器(核兵器)を保有している」というのが、アメリカがイラクに攻撃を仕掛ける有力な根拠のひとつとされたのだ。
だが、大勢が決したのちにさまざまな調査がなされたものの、イラクで大量破壊兵器が見つかることはついぞなかった。20106月に出されたアメリカ調査団による調査最終報告でも、「生物・化学兵器の備蓄は一切なく、核兵器開発も91年以降は頓挫していた」と結論づけられている。
では、ジュディス・ミラー記者が報じた核開発疑惑とは何だったのか。実はミラー記者の情報源とは、ほかならぬチエイニー副大統領のスタッフだった。「イラクに大量破壊兵器が存在する」という捏造情報をニューヨーク・タイムズにリークして記事を書かせ、その報道を利用して戦争を起こす。政府が仕掛けたマッチポンプのような情報戦に、ニューヨーク・タイムズはまんまと引っかかってしまったのだ。
イラク戦争終結後の20045月、ニューヨーク・タイムズはミラー記者の記事に重大な誤りがあったことを認め、一面トップを使って詳しい検証記事を掲載している。イラク戦争開戦に反対するどころか、ニセモノの特ダネをつかまされた失態を認め、編集幹部はクビになった。
アメリカを代表する新聞であるはずのニューヨーク・タイムズもまた、結果として翼賛体制に協力し、当局との距離感を完全に見失ってしまったのだ。
ジャーナリストとは、基本的に権力寄りであってはならない。権力の内側に仲間として加わるのではなく、権力と市民の間にたちながら当局を監視し、不正を糺していく。ジュディス・ミラー記者のように権力に近づきすぎたジャーナリズムのことを、アメリカでは批判的に「アクセス・ジャーナリズム」と呼ぶ。
チェイニー副大統領サイドのやったことは、戦前の日本が中国でやったことと全く同じである。全く違うところは、ジャーナリズムであろう。日本のメディアが「イラク戦争」でアメリカに加担したことで、新聞社の幹部が責任をとったであろうか。他人ごとのように、「イラクには核はなかった」と報道しているだけだった。そこには、真剣な反省もない。
今、すぐにできることは、記者は記事を書いた場合、全て署名入り記事にして欲しい。そこから反省が生まれてくるのではないか。

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