2012年11月22日木曜日

力は知?


佐藤優氏の「読書の技法」を読んでいる。その“はじめに”のなかに日本の現状を書いている部分がある。的を得ているので紹介する。

日本は現在、危機に直面している特に2011311日の東日本大震災以後、危機が可視化された。
震災から1年以上経ったのに、被災地からの瓦礫の撤去ができていない。東京電力福島第一原発事故の処理も遅々としており、国民が安心を回復するような状況からはかけ離れている。また、政治家は、当事者にとっては深刻なのであろうが、日本国民にも日本国家にも関係のない政争に明け暮れている。国民の政治不信がかつてなく高まっている。同時に「強い腕」による決断で、われわれが直面している問題を一挙に解決してほしいという願望も無意識のレベルで強まっている。それが橋下徹大阪市長に対する国民の過剰な期待となって現れているのであろう。
国際社会に目を転じると、グローバリゼーションとともに帝国主義的傾向が強まっている。
グローバリゼーションは、ビジネスパーソンの日常にも及んでいる。終身雇用制度は過去の話になった。職場における評価も、目に見える具体的数字が重視されるようになった。また、どの企業でもリンガフランカ(国際語)である英語の必要性が強調され、これまで外国語と緑がなかったビジネスパーソンの不安をかきたてている。
ニュースでは、中国の急速な台頭と自己主張の強化が伝えられる。帝国主義国は、相手国の立場を考えずに、自国の権益を最大限に主張する。相手国が怯み、国際社会が沈黙していると、帝国主義国はそれに付け込んで、自国の権益を拡大する。中国やロシアだけでなく、米国も、帝国主義的な外交を展開している。「食うか、食われるか」の弱肉強食の国際社会で、今後、日本が生き残っていくことに誰もが不安を抱き始めている。
最近の教養ブームの背景には、「知力を強化しなくては生き残っていけないのではないか」という日本人の集合的無意識が反映していると筆者は見ている。確かに「知は力」であり「力は知」である。知力をつけるために、不可欠なのが読書だ。筆者の読書術について、全力を投球して書いたのが本書である。読書の技法というタイトルになっているが、物の見方・考え方、表現の仕方まで視野に入れているので、知の技法についての入門書と考えていただきたい。

「知は力」はわかるが、その反対の「力は知」かな?

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