2014年2月12日水曜日

診断のインフレ


「正常を救え」という本から、興味ある部分を紹介する。過剰診断が如何に薬の過剰投与につながっているか・・・
診断のインフレの悪い結果
一九八年代はじめ、生涯のうちに精神疾患の診断条件を満たすアメリカ人は三分の一ほどだった。現在ではおよそ半数に達する。ヨーロッパも急速に追いつきつつあり、四〇パーセントを超える。これは実際より低い数字だと考える人もいるーー もっと入念な予測調査をおこなうと、たしかに生涯有病率は倍増する。
こういう結果を信じるのなら、ほぼ全人口に精神疾患が行きわたっていることになる。ある研究によれば、三二歳までに全人口の五〇パーセントが不安性障害の条件を満たし、四〇パーセント超が気分障害の条件を満たし、三〇パーセント超が薬物依存の条件を満たす。別の研究では、病気がほぼあまねく蔓延しているという主張になおさら近い結果が出ているーー わずか二十一歳になるまでに、未成年の八〇パーセントが精神疾患の条件を満たすという。膨れあがった有病率は声高に喧伝され、診断も治療も少なすぎるという製薬企業の主張を勢いづかせているーー こうして悪循環がつづく。
診断のインフレを示す証拠は至るところにある。精神疾患の爆発的流行は過去一五年間に四度あった。小児の双極性障害は、信じがたいことに四〇倍に増えた。自閉症はなんと二〇倍に増えた。
注意欠陥・多動性障害は三倍になった。成人の双極性障害は倍増した。有病率が急上昇するとき、そこにはそれまで見落とされていた本物の患者がいくらかは含まれているーー 診断とそれに基づく治療を切実に必要としている人たちだ。しかし、これほど多くの人々、とりわけ子どもが、なぜ突然病気と見なされるのかは、診断が正確になったというだけでは説明できない。
その答えは、薬の過剰供給、すなわち製薬メーカーの薬漬け戦略に他ならない。

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