2015年1月14日水曜日

風化に抗う

 日経に倉本聰さんが「風化に抗う」と題して語っている。そろそろ震災から4年が経つ。
昔の体験を風化させてはいけない
今年は戦後70年。元日に80歳となった脚本家の倉本聴さんは、日本の行く末を心配する。「ヨーロッパでは古くから文明社会は3本の柱で成り立っているといいます。エコノミー、エコロジー、カルチャーです。経済と環境と文化がバランスよく共存してこそ文明社会だというのです。日本は経済だけが突出して、環境と文化の柱がひしゃげているように感じます」
「カルチャーとは文化や芸術のことだけじゃない。アグリカルチャー(農業)も漁業も職人の技もカルチャーです。軽視してはいけない。エコ意識は高まりました。でも日々の暮らしに無駄や浪費が多くて、まだ本物じゃない。東日本大震災で止まった原発の再稼働容認が、そんな日本の今を象徴しています」
「敗戦を乗り越えて日本は大国になった。日本人の頑張りは称賛に値しますが、ずっと上を向いて走ってきて、忘れ物に気づかずにいるんじゃないか」1970年ごろの生活を思い出そう、と提唱する。
福島に寄り添って風化に抗(あらが)いたい
倉本さんはもっと切実で悲しい風化を憤っている。東日本大震災と福島の原福島に寄り添い前へ発事故の記憶や教訓を、しっかりと心に刻むベきだという。「岩が砕けて石になり、石が砕けて砂になって、やがて砂が塵になり、風に乗って飛散して消え去る。それが本来の意味の風化なんです。気が遠くなるような長い歳月をかけて起こるのです」
「ところが東日本大震災の記憶は発生から4年も経たないのに風化が始まっている。原発事故も廃炉や核廃棄物の処理をはじめ難題の解決に向けた道筋が見えないまま、国は再稼働に舵を切り始めています」
「犠牲になった方々や遺族のみなさん、故郷を捨てざるをえなくなった人たちを忘れてはいけない。悲しみや苦しみを乗り越えようとして頑張っている人々を応援しないといけないと思います」
復興に尽力する人たちに敬意を表する一万で、震災と原発事故を一緒にして復興と呼ぶのはおかしいという。「地震と津波は地殻変動が引き起こした天災で、原発事故は人災です。両方を並べて『復興』と称してはいけない。原発事故の被災者には復興と並行して『賠償』をきちんとしなければいけません。僕は地震国の日本に原発を造ったこと自体が人災だと考えています。原発というリスクを背負いながら贅沢な生活を続けるのか、不便を忍んでも70年ごろの暮らしに戻って原発をなくすのか。日本人は真剣に選択しなくてはいけないと思っています」
今年は戦後70年、阪神大震災・松本サリンから20年。風化に抗いたい。

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