2015年3月9日月曜日

返報性原理


毎日新聞の鹿島茂氏の「引用句辞典」から今回は、「強い返報性原理」の一部を紹介する。
人が暴力で死ぬ確率は、狩猟採取時代と現代を比較すると、戦争や内戦を勘定に入れても十分の一以下に低下している。つまり、人類が紛争解決で暴力に訴える率は長いスパンで見ると明らかに低くなっているのだ。
では、この「進化」はどのようにしてもたらされたのか? これまでの説明は、近い未来において再び会う可能性のある人には悪よりも善を施した方が得という「損得計算(打算)の原理」からなされてきたが、近年の認知科学の実験により、人間はこれとは異なる「強い返報性原理」に支配されているという説が有力になっている。
すなわち、親切をしてくれた人には親切で、不親切をされた人には不親切で報いるのが普通の「返報性原理」であるのに対し、「強い返報性原理」というのは、人から親切にされた人は赤の他人にも親切にするし、また人から不親切にされた人は赤の他人に対しても不親切にするというある意味「非合理的」な人間的心理のことを指す。
どうやら、人間というものは、損得を秤にかけて計算を働かせる「理性」よりも、親切・不親切によって引き起こされる「うれしい・むかつく」という「感情」に大きく支配された存在のようなのだ。
なるほど、この「強い返報性原理」を適用すると、ただ残虐で獣のようにしか見えないテロリストの心の中が少しだけ覗けるような気がする。そう、彼らはミリエル司教に出会えなかったジャン・ヴァルジャンのような不幸な人たち(レ・ミゼラブル)なのだ。
不正と不法と暴力を絶対に許さないリゴリズムはもちろん必要だが、「理由なく親切にする人」が出現しない限りテロリストの根絶も不可能だというのもまた真理なのである。
返報性原理と言う言葉自体知らなかった。「理由なく親切にする」ことがキーワードになりそうである。いわゆる「親切なおせっかい」が期待されていると思う。

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