2012年4月10日火曜日

生活保護

 日経の日曜日欄に「今を読み解く」というコーナーがある。そこで、本の紹介しているのだが、4月8日は「生保」関係の2冊の本が紹介されていた。紹介文を紹介したい。

 日本国憲法25条は、生活に困窮するすべての国民に対して健康で文化的な最低限度の生活を保障している。それならば、なぜ、現代日本において衣食住が不足したり、医療サービスを受けられない人々が発生するのであろう。制度的には公的年金(老齢、障害、遺族)、最低賃金、失業保険、児童扶養手当など、さまざまな制度が最低生活保障の一端を担っている。そして、これらの制度をもってしても、貧困から脱出できない人々に対する最後のセーフティーネットとして生活保護がある。
 しかし、残念ながら、公的年金や最低賃金などの現行の諸制度は、最低生活の保障という観点からは設計されていないのが事実である。駒村康平編『最低所得保障』(岩波書店10年)は、これら制度の発足当時からの理念や改正の内容を「最低生活の保障」という観点から詳細に分析する労作である。そこから見えてくるのは、最低生活保障の機能がほとんど生活保護へ押し付けられているということである。
 
高齢者と医療費
例えば、諸外国では、公的年金で高齢者の最低生活が保障されているので、そもそも高齢者が公的扶助の対象とならない国もあるが、日本の生活保護の受給者は、半分が60歳以上の高齢者である。また、生活保護費の約半分が医療費であり、その多くが精神関連の入院費である。
 地域に精神障害をもった人が暮らせる受け皿が用意されていれば、生活保護は大きく削減できる。すなわち、公的年金や精神障害者への制度の不備が、「つけ」として生活保護に回ってきているのである。
 生活保護の現状について最もわかりやすく解説しているのは本田良一著『ルポ生活保護』(中公新書10年)であろう。
 本書は、貧困の定義から現状の生活保護の運用の問題まで網羅している。生活保護は、その運用によって大きく変わる。1980年代にも、不正受給を理由に引き締められ、受給率が大幅に下がった。しかし、貧困率はその間も上昇し続けている。必要なのは、受給額の1%にも満たない不正受給(10年度調査)に一喜一憂するのではなく、いかに国民の最低生活を保障するかの議論である。
 そのためには、生活保護の手前の制度をいかに充実させるかの議論が必要なのである。高齢化や精神疾患を抱える人の増加は今後も生活保護率を上げるプレッシャーとなる。それをすべて生活保護で丸抱えするのか、選択の時期が来ている。

 日経は経済新聞である。政治的な記事はかなり右よりであるが、それ以外の記事は結構読むべきものがある。

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