2013年1月22日火曜日

日本語の冒険


阿刀田高「日本語の冒険」を読む。阿刀田高は県立図書館の図書館長である。有名人を図書館長にして、めったに山梨にいないのに、高額を払うより、図書館を利用しやすくするために、税金をつかって欲しいものだ。
作家としての「阿刀田高」は好きである。ショート・ショウートやユーモア小説が面白い。「日本語の冒険」の中の(天使の辞典)の一部を紹介。

(天使の辞典)なんて宗教ぽくって、いけてないんじゃないすか」
「タイトルはあとでいい。まず内容だ。えーと、これなんかどうだ」
指先でレポート用紙を叩きながら言う。「はい?」
「幸福、サラリーマンにとってはよい上役、妻にとっては夫の母がよいこと」「経験あるみたいですね」
「馬鹿。そのくらいは知っとる。命、人は必ず死ぬ。だから生きていることを大切に」
「りっぱ過ぎて源さんじゃないみたい」
「俺は本当はりっぱな人間なんだ。酒、いっぱいめは喜びのため、二はいめは悲しみをまざらすため、三ばいめは、その他すべての理由で」
「わかるなあ」「で、次。喜び、みんなで喜ぶと、喜びは大きくなる。悲しみ、みんなで悲しむと悲しみは小さくなる」
「なるほど」
「算数、“ひどい点数だな。算数がきらいなのか”“いいえ、僕は好きなんだけど算数が僕をきらうんです”」
「いいじゃないすか。僕もそうでした」
「有名人、有名無実にならないように」
「いますね、そういうの」
「錬金術、女は涙で金を造る」
「どこかで聞いたような気がするけど」
「かまわん。上手に見出しをつけて辞書にすることが大切なんだ」
「試験、“どんな問題が出た”と尋ねられ、全部思い出せる人は合格」
「どうしてですか」
「俺の経験だ。思い出せるのは、よく考えて答えたからだ。鉛筆を転がして○×をつけたやつは、思い出せない」
「そうかもしれませんね」「放尿、限りなく透明に近いイエロー」
「なんですか、それ」
「村上龍を知らんのか。(限りなく透明に近いブルー)。デビュー作だぞ」
「聞いたことありますけど。しかし、その解釈でなにか人生の役に立つんですか。(天使の辞典)はそれが目的でしょ」
「まさかのときには“限りなく透明に近いイエロー”でーす、“失礼”と謝る。みんなが笑って許してくれる」
「そうかなあ」「ユーモアが大切なんだ、生きていくには」
 他に「コーヒーは青山で飲むのが美味しい」⇒「ブルーマウンテン」
 他に「人生には三つの山がある。上り坂、下り坂、そして“まさか”」
 ま、親父ギャグみたいなものではある。
追記」「忠告なって一円玉くらいなものよ、あんまり役にたたない」

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