2015年2月4日水曜日

人質殺人事件


過激組織「イスラム国」による日本人人質殺人事件での政府の対応についてはきっちり検証すべきと考える。一般紙が抑制的に書いている中で、共同通信編集室長:杉田弘毅氏の評論はわかり易い。以下、紹介する。
「イスラム国」と日本は全面的な対決に入るのだろうか。そんな懸念を深めざるを得ない。後藤健二さんを殺害したとの映像声明で「イスラム国」は「おまえの国民を場所を問わずに殺りくする」とさらなる邦人殺害の予告ともとれるメッセージを出し、安倍晋三首相は「罪を償わせるために国際社会と連携していく」と強い言葉を発した。
米中枢同時テロの衝撃に、米国は荒々しくアフガニスタン戦争、イラク戦争に突き進んだ。今回の卑劣なテロには怒りに身が夢見る。しかし冷静に日本がとるべき道を考えたい。
日本は「親米」でありながら、「イスラムの友人の顔を持つ。この二つの顔が「矛盾」ととられ、その両立がいよいよ限界に来ている。
欧米による中東支配の歴史。その欧米とつながるアラブの抑圧的体制。石油確保とイスラエルの安全のために軍を駐留させる米国。こうした事態は、聖戦を口実に世界中のイスラム教徒の若者をテロ行為に吸い寄せた。
そして米国が始めたイラク戦争という暴挙のツケが大きい。米国は大義もなく政権を倒し、混乱の中、多数の市民が犠牲となった。イラク戦争が「イスラム国」を生んだと言える
邦人2人は安倍首相の中東歴訪前に拘束されていたのだから首相の中東での言動は「もっと注意を払うべきだった。外務省は情報収集を怠った」(シリア駐在経験のある外交官OB)と言えるのだろうが、「イスラム国」という異常な暴力組織を相手に何ができたのか、答えは出ない。
明確なのは、日本が米国とともに、「イスラム国」との戦いに参戦している、との印象が広まってしまったことだ。オバマ米大統領も日本を、対テロ政策の協力者としている。2004年にイラクで邦人を殺害した過激派は、「自衛隊のイラク撤退」を要求しており、この頃から日本は敵対勢力と位置づけられた。
日本は非欧米同士として、戦前からイスラム世界と良好な関係を築き、さまざまな支援は現地で高く評価されてきた。だが、中東和平への関与の薄れや日米同盟強化の政策の積み重ねで、「善意の友人のイメージは埋没しがちだ。中東で「手が汚れている」米国に寄り添う日本の行動はつけ込まれる懸念がつきまとう。
「テロに屈しない」という姿勢も「テロ対策強化」も当然だ。同時に人道・開発支援の増強も必要である。中東情報の収集・分析は欠かせないし、個々の日本人は賢い行動が求められる。しかし、何よりも「日本はアジアの、平和を愛す善意の国だ」という本来の姿を、言葉だけでなく地道な行動で復活させるのが、喫緊の課題ではないか。
安倍政権はこの事件を契機に一気に日本を「軍事国家」に仕立てようとしている。「9条改憲」の動きに注意が必要である。

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