2015年5月8日金曜日

帰還兵はなぜ自殺するのか


帰還兵はなぜ自殺をするのかを読む。アフガニスタン、イラクに派兵された200万人の兵士のうち、50万人がPTSDTBIに苦しんでいるという。その本の訳者のあとがきを紹介する
訳者あとがき
「ワシントン・ポスト」紙で二十三年間にわたって記者として働き、二〇〇六年にピュリリツアー貨を報道部門で受賞したデイヴィツド・フィンケルは、イラク戦争に従軍する兵
士たちを取材するために新聞社を辞めてバグダッドに赴いた。そして二〇〇九年に『TheGood Soldiers』を上梓した。これは、二〇〇七年四月から1年間にわたって、陸軍第十六歩兵連隊第二大隊の兵士たちと生活を共にし、緊張に満ちた日常と死と隣り合わせの戦闘を詳細にレポートしたものである。
それで終わるはずだった。「ジャーナリストとしてこの仕事をやり遂げた。それを私は誇りに思った」とフィンケルはQ&Aのインタビューで語っている。ところが、それで終わらなかった。バグダッドで知り合った兵士たちが、帰還後に電話やメールや手紙で不調を訴えてきたからである。
兵士たちが日常にすんなり戻れないことや精神的なダメージを抱えて苦悩していることを知ったフィンケルは、「私の仕事は半分しか終わっていない。戦争の後を取材しなければならない」と決心した。そして彼は兵士本人はもちろん妻子や身内にいたるまで時間をかけて取材し、ペンタゴンの上層部や医療関係者からも、丁寧に聞き取りをおこなった。
こうして書き上げられたのが本書である。アメリカでは二〇十三年に出版された。完成された十六の章から浮かび上がってくるのは、戦争の後の苦痛に満ちた人間の姿であり、
無力感にとらわれる家族の姿であり、焦燥感に苛まれる医療従事者や陸軍の上官たちの姿だった。
イラク戦争は、イラクが大量破壊兵器を隠しているという理由でアメリカがイラクに侵攻したことから始まった。二〇〇三年の三月のことである。その裏には、9ll以降のアメリカの不安と、石油問題や宗教問題があったと言われているが、国家の威信を守るために直接戦地で戦ったのは、大半が貧困家庭出身の若い志願兵だった。第十六歩兵連隊第二大隊の兵士の平均年齢は二十歳だった。
そして戦争が終わり、兵士は英雄となって帰ってきたように見えた。ところが、日に見える身体的な損傷はなくても、内部が崩壊した兵士たちが大勢いることがわかった。アフガニスタンとイラクに派兵された兵士はおよそ二百万人。そのうち五十万人が、PTSD(心的外傷後ストレス障害)TBI (外傷性脳損傷)に苦しんでいるという事実が明らかになった。そして残された問題は、精神的な傷を負った兵士たちをどのように治していくのか、果たして治せるのか、というものだった。
 日本の時の政府は、このような事実を知っているのか。イラク支援のために自衛隊員がのべ1万人派遣された。イラクから帰還後に28人が自殺したことが報道されたのは1年前の事である。

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