2012年7月17日火曜日

社内英語化

 ブック・オフに行った。そこで105円の香山リカ氏の「しがみつかない生き方」という本を購入した。その中で、なるほどと思った箇所を紹介したい。

「私が私が」で人も企業も病んでいく
私は近年、企業などで働く人のメンタルヘルスの問題に興味を持ち、企業に選任されて活動する産業医の研修会、研究会などに顔を出すようにしている。そこで、ある大企業で月に2回、働く人や管理職の相談に応じているという産業医が、そっと教えてくれた。
「私の行っている企業は2000年以降、成果主義を取り入れるのと同時に、国際競争に勝てるように、とすべての会議を英語にしたんですよ。会議では、自分の企画がいかにすぐれているかをアピールしたり自らの人脈をスライドで誇らしげに見せたりする人が続出して、さながら映画に出てくるアメリカの大企業みたいな雰囲気になったそうです。
ところがね、その″アメリカ化″から2年くらいたってから、私の仕事が激増してきたんですよ。つまり、うつ病などで休職する人が相次いだんです。会社全体としても、威勢のよい人、鼻持ちならない人が増えた割には、業績も上がらなくなったって・・・。
結局、英語の会議はやめ、成果主義そのものに対しても見直しが行われてるんだよね。それにそもそも、自分をアピールしようにもこの不況でみんな成績が下がり、自慢どころじゃなくなったんだけど」
つまり、「私はすごい」「実はセレブなんです」と半ば強制的に自分を誇大広告的にまわりに見せるような仕組みを取り入れたところ、みんな疲弊し部局の協調性もなくなり、個人のレベルでも企業全体としても、マイナスの効果しか得られなかった、ということだ。
2009年6月に発表された企業で働くいわゆる産業カウンセラーへの調査結果でも、実に70.6%のカウンセラーが「メンタルヘルス不調者が増加した」と回答。また、「モチベーションの低下」についても66.9%が、「職場の人間関係や雰囲気の悪化」は約半数が指摘している。
おそらくこれらの企業でも、「大切なのは競争力だ!と他企業間でもあるいは企業内でも競争をすることが奨励され、「蹴落とすか、蹴落とされるか」の雰囲気が蔓延しているに違いない。しかし、そうやってポジティブ思考で自分を盛り上げ、競争のフィールドに勇んで出て行った結果がこうなのだ。
誰もが「私ってすごい」と自分に暗示をかけ、「絶対にナンバーワンに」と我先に打って出るのは、「人の道に外れている」など道徳的に正しくないばかりではない。どうやら、経済的、経営的な観点から見ても、これが企業や社会を成長させるものではないらしい、ということがわかりつつある。「情けは人のためならず」。こんな言い古されたことわざの意味と重みを、もう一度考えるときが来たのではないだろうか。
今、社内「英語化」を推進している企業が増えてきている。私は、この方向に疑問を持っている。この本を読んで、やはりと思った。いくら企業のグローバル化への対応をしても、日本語をしっかり話せない人間が、他国の人から信頼されることはないであろう。

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