2013年9月3日火曜日

大人の少女化


「少女たちの昭和」(小泉和子)「河出書房新社」という本を読んだ。著者の小泉さんは昭和の8年生まれである。和子という名前は戦前、戦後で一番多い女性の名前である。まさにこの本を書くのにふさわしい名前である。本の中で、興味ある部分の一部を紹介する。
大人の少女化
   一言でいえば大人が大人になってないということであろう。「三十を過ぎた、いい大人がなんで(ぼく)なんだ!?」というような子供っぽい言動、信じられないような幼稚な犯罪を犯す高級官僚、自分が遊ぶため育児放棄する母親をはじめとして、自己制御がきかない自己中心の未熟な大人が多くなっているのは周知のとおりだが、こうした幼時退行現象の一つに「少女化」があるのではないか。
   大塚の「少女民俗学」によると、「かわいいカルチャー」が顕在化するのは一九七〇年代後半で、それまで日陰の存在だった少女文化が目に見える形で一つのマ-ケッーを形成しはじめたという。これを「少女文化」のビッグ・バンだといっている。
   最初はもっぱら少女が対象であったが、やがて少年から青年へとひろがり、少女たちの母親世代を巻き込み、八〇年代には父親世代である「男性社会」をも侵食していった。
   ただ受け入れ方は男性、女性まったく同じではなく男性の場合はロリコンやエロかわいいといった面に興味が強いという。しかし大塚によると、メルヘン・ファンタジー・無垢・幼さ・弱々しさ・自己憐憫・キュート ・オカルト指向などといった感性は男女共通していて、この点が「かわいいカルチャー」受容におけるきわだつ特徴だという。いずれもソフトで傷つけられることのない、優しい世界である。
   たとえば成人男性向けコミック誌に「動物マンガ」という分野があり、ネコ・シロクマ・ゴマフアザラシといった(かわいい)キャラクターが氾濫しているという。なかで最も読者の共感を集めているのが『ほのぼの』というのに出てくるいじめられっ子のシマリスだそうである。(かわいくて)(かわいそう)な存在に同化しているわけで、まさに(少女化)だという。
    また「ポエム」という「少女の感傷や心象風景をストレートに、かつたどたどしく描いた日記のような詩に近い創作文」があるという。少女マンガ誌から始まったもので、具体性を排した虚構の風景だが、これらがいまや大人にもひろがっていて、その意味では『ノルウェーの森』の村上春樹も(ポエム)だという。
    なぜこういうことになったかについては、大塚は日本人全体がかつての「少女」と同じ状態になったためだといっている。すなわち非生産者となり、外部からもたらされる「モノ」を消費するだけの存在になったこと、上級学校に進学していること、家庭と学校によって囲い込まれていることもそうである。
    まさに、現在の日本は子どもを大人に育てない社会になっていると思う。自分の子どもの事を考えてみて、まさにその通りだと感じた。

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