2013年12月3日火曜日

内なる天皇制


出張先のホテルで朝日新聞が無料で置いてあったので、久々に朝日新聞を読んだ。我が家は毎日新聞である。朝日新聞のオピニオン欄に、映画監督であり、作家でもある森達也氏が、「内なる天皇制」として文章を書いている。その中のごく一部を紹介する。
「そもそも人間は象徴にはなり得ません。ひとりひとり個性があるからです。表情や発言に感情がにじんでしまうことがある。寿命があるから代替わりもする。象徴天皇制は、どんなキャラクターの人が天皇になるかによってその相貌が変わる、実はとても不安定な制度です」
「天皇が『現人神』のままでは占領統治がうまくいかないと考えたアメリカの意向を受け、昭和天皇は『人間宣言』をし、象徴天皇となった。ここで捩れてしまったのです」
 ただ、天皇への思い入れが薄い若い世代が増えれば、状況はずいぶん変わってくるでしょう。
「僕もそう思っていましたが、今回、それは違うと気づいた。老若男女を問わず日本人は好きなんですね、『万世一系』という大きな物語が。日本は世界に例をみない特別な国なんだという、インスタントな自己肯定感を与えてくれますから」
「天皇制は、選民思想を誘発します。この国の近代化の原動力の一つは、他のアジア諸国への蔑視であり優越感で、敗戦後もその感情は持続しました。だからこそ原爆を二つ落とされ、首都は焼け野原になって無条件降伏をしたのに、二十数年後には世界第2位の経済大国になった。確かにこれはミラクルです。しかし、GDP (国内総生産)は中国に抜かれ、近代化のシンボルである原発で事故が起き、日本は今後間違いなく、ダウンサイジングの時代に入ります。でも、認めたくないんですよ。アジアの中のワン・オブ・ゼムになってしまうことを。ひそかに醸成してきたアジアへの優越感情をどうにも中和で経ない。その『現実』と『感情』の軋みが今、ヘイトスピーチや、『万世一系』神話の主役である天皇への好感と期待として表れているのではないでしょうか」
「結局、戦後約70年をかけてもなお、僕たちは天皇制とどう向き合うべきか、きちんとした答えを出せていない。山本さんの軽率な行動は図らずも、このことを明らかにしてくれました」

確かに、平成天皇は「昭和天皇」とはまったくイメージが違う。そこの違いと、今の若者の天皇感を森氏はうまくとらえていると思う。自分にとっての「内なる天皇制」を考えてみたい。「そもそも人間は象徴にはなり得ません」はまったく同感。

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