2015年4月27日月曜日

子供の貧困


池上彰氏のちくま新書から出た「日本の大課題 子供の貧困」(社会的養護の立場から考える)を読む。児童養護施設から見えてくる子供の貧困を書いている。あとがきを紹介する。
本書をお読みいただき、児童養護施設がどのようなものか、おわかりいただけたでしょうか。
児童養護施設での取り組みを見ることで、「子どもの貧困」の実情も見えてきたはずです。
児童虐待は貧困家庭に起きやすく、必然的に虐待を受けた子どもたちが、親から切り離されて施設に入ってきます。
そこでの子どもたちの様子を観察すると、貧困だけでなく、虐待だけでもない、重層的に積み重なってきた問題が存在することが見えてきます。
貧困の中で追い詰められた親の中には、精神疾患に苦しむ人たちも多数います。その親の様子は、子どもにも悪影響を及ぼします。
こうした様子は、「多重逆境」と呼ばれます。なんともやり切れません。それでも健気に生き抜く子どもたちの姿もまた、浮かび上がってきたのではないでしょうか。
子どもたちの自立を支援する。子どもたちが自立できれば、社会で就職でき、きちんと所得税や住民税を払うことができるようになる。まさに「良き納税者」を育てるのです。
「子どもの貧困」を考える上で最も大事なことは、抽象論ではなく、子どもたちの実相を把捉することです。さまざまな対策づくりは、そこから始まります。
児童養護施設の子どもたちの様子は、ふだんの私たちの視野からは消えています。見えないということは、存在しないも同然。子どもたちは社会から忘れられてしまいます。社会から忘れられることの辛さ。これでは、子どもたちは自立することができません。
子どもたちを見守り、自立を助け、社会で働いて税金を納められるように育て、社会に貢献する存在にすること。これが喫緊の課題だと思うのです。
社会の中で自分の存在が確認できれば、人は絶望の淵から這い上がることが可能になります。人が、人として認められ、人として生きていくことが可能な社会。これが、私たちが築くべき社会だと思うのです。
本にまとめるに当たっては、筑摩書房の永田士郎さんにお世話になりました。永田さんの的確なアドバイスによって、本の視点が定まっていったと思います。
20152月ジャーナリスト  池上彰
子供の養育は親の責任だけでなく、社会の責任でもある。親が良き納税者になれない社会では、国、社会の責任は大きい。

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