2012年9月10日月曜日

世界の99%を貧困にする経済

「世界の99%を貧困にする経済」という本を購入。著者のジョゼフ・E・スティグリッツ氏は、2001年「情報の経済学」を築き上げた貢献によりノーベル経済学賞を受賞した、アメリカの大学教授である。この本の紹介で、慶応義塾大学の池尾和人教授は以下のような紹介をしている。
現在、米国をはじめとしたすべての先進諸国において、グローバル化と情報技術革新が労働力の二極化をもたらすように作用している。しかし、とくに米国では、この「市場の力」の働きを緩和するセーフティーネットが十分に存在せず、むしろ「政治の力」で、その働きが富裕層に都合良く増幅させられてきた。
その結果、この間の米国では、上位1%だけが成長の成果を享受する一方で、残りの99%の中下層の人々の生活水準は向上するどころか悪化してきた。こうした現実は、住宅価格バブルによって一時的には覆い隠されてきたが、金融危機後は白日の下にさらされるに至っている。
著者のスティグリッツ教授は、いまや米国は機会均等の地どころか欧州以上に階級格差が拡大し、民主主義も機能不全に陥った不平等社会になってしまったと激しく指弾する。
本書は、こうした現状認識に基づいて、現代米国の政治・経済メカニズムを分析し、そのゆがみを正すための経済改革を提案している。
海外に仕事をアウトソーシングできる機会が広がったことは、労働者の交渉力を弱めることになる。このことをうまく利用して、上位1%の人々は自らの利益にかなった政治・経済ルールを作り上げ、そうしたルールが正当なものだという信念を社会に広めることにも成功してきた。
すなわち、現在の米国における不平等は、真空の中での市場の力によって作り出されたものではなく、政治の力によって形成されたものである。それゆえ逆にいうと、政治改革を行い、大胆に経済政策を変更すれば、現状を是正し、格差を縮小することは可能だというのが、本書の基本的な主張である。
この本の帯には「大衆を食いものにして、何の責任もとらず、富をむさぼる上流層。その手口は、政治・経済のルールを自分たちに都合よく作り上げ、それがすべての人々の利益になると信じ込ませるものだった。アメリカ、ヨーロッパ、そして日本で拡大しつつある「不平等」の仕組みを解き明かし、万人に報いる経済システムの構築を提言する。とある。まさにその通りである。

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