2013年6月12日水曜日

憲法は「領海」でなく「公海」

 
雑誌「世界」の5月号で、経済評論家の内橋克人氏と、湯浅誠氏が憲法対談をしている。そのごくごく一部を紹介する。
リベラル衰退の中で市民はどう闘うか
湯浅 最短で二〇一五年国民投票はあり得るだろうという前提で考えたときに、大事かつ実はいちばん難しいのが、多様なやり方で展開するアクター同士がきちんとお互いのやり方を認め合うということです。ついつい自分と同じやり方以外の人間を批判したくなる。結局、右派は結束するけれども左派は難しいという、同じことが繰り返される。今度それをやったら自民党的改憲にもっていかれることになります。
ワンイシューだと小異を捨ててみんなが一緒にまとまれるかというと、そう簡単にはいかない。というのは、九六条の問題で国民投票にかけられるときに、当然ほかの条文の解釈も見越した判断になりますから、脱原発で組めていないように、九六条以外の評価で対立する意見を持っている人たち同士は、やはり組めなかったりする。もちろん、そうなるとは限らないし、そうならないようにしなければいけない。
内橋 敬愛する佐高信さんは日本国憲法、なかで九条は「領海」ではなく「公海」だ、と。
ただ一つの国の基本法にとどまるものでなく、世界に普遍の人間知である、と。
それを「領海」に閉じ込めて廃棄しようとする勢力が政権を乗っ取った。まさに民主党政権への失望の裏返しです。民主党の責任は大きい。彼らに贖罪の念はあるのか。
民主党政権成立のころはリベラル色が強く、実行された政策には、国民生活の細部にわたる、かなりな先駆性がみられたと思います。生活保護の母子家庭に対する加算の復活を長妻厚労相の時に真っ先にやった。そういうものを拾っていくと、当初はかなりリベラルだった。それがいつの間にか一変する。その過程で一体何があったのか。一つにアメリカの意向があることは、ウィキリークスが暴露したアメリカ国務省ヽ外交公電からもわかります。小沢裁判もそうですが、アメリカの巧緻な計略と圧力で、民主党政権のすべてが無力でダーティーなイメージへと塗りかえられていった。
いまの安倍政権は、全身これ「アメリカ奉仕者」です。優れた詩人、アーサー・ビナードさんははっきりと言う、「日本はもう完全にアメリカの植民地か属領ですよ」と。アメリカ人の側からみて、どのように日本がアメリカの傘の下に嵌め込まれていったか、透視図のように見透かしている。
湯浅 安倍政権と鳩山政権をよく頭の中で比べてみるんですが、二〇〇九年の政権交代の時も、実は個別の政策についての国民的な支持率は高くありませんでした。民主党に投票するという人は四割くらいだったけれども、子ども手当や高校授業料無償化をどう思うかと個別に聞かれれば、賛成の人は二割いなかった。だから個別の政策が支持されてのことではなくて、自民党ではなく民主党という投票の人が多かった。今回も全く同じで、国防軍を支持して自民党に入れたわけではなく、民主党がだめだから自民党にという人が多かったんです。常にそうやって否定形で選ぶところは変わらない。
二〇〇九年の秋にも、自民党や財界はけっこう最初から子ども手当を「ばらまきだ」と批判していましたが、主流の言論にはならず、遠くで文句を言っているみたいな感じだった。潮目が変わったのはやはり、政治と金の問題だったと思います。鳩山さんのお母さんの献金と陸山会事件。逆に言うと、それくらいのスキャンダルが出ないと、いまの勢いが自動的に失速したり、みんながいろいろなことに気づいて潮目が変わるというのは難しいかもしれない。
内橋 安倍首相らは「自民永久政権、再び」を狙って、この任期中にあらゆる装置づくりを進めるでしょう。湯浅さんたちは国民投票を視野に入れた運動をすでに始めておられる。さすがです。何としても前進させていただきたいですね。
湯浅 はい。どこまでできるかはともかく、頑張ります。
佐高信氏の九条は「領海」ではなく、「公海」であるとう表現はわかり易い例えである。

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