2014年11月27日木曜日

ヘイトスピーチ


毎日新聞海外からの発言を紹介
ヘイトスピーチの法規制
パトリック・ソーンベリー元国連人種差別撤廃委員、英キール大名誉教授
「人種差別撤廃条約」が国連総会で採択されて来年で50年になる。民族的少数者ら社会的少数派への憎悪をあおる「ヘイトスピーチ」を法律で禁じるよう求める条約だ。スピーチ(言論)という言葉が少し誤解を与えているようだが、ヘイトスピーチの真の問題は、語られる言葉そのものではない。差別の扇動が社会にもたらす影響にこそ危険がある。ナチスドイツによるユダヤ人大虐殺もそうだ。人種主義的な扇動がジェノサイド(大虐殺)をもたらした。こうした例が歴史にある。
だから、ヘイトスピーチの禁止は単なる「言論の自由」の規制ではない。表現の自由とのバランスは大事だが、ヘイトスピーチが社会的少数派から自由な言論を奪ってしまうという実態がある。多数派は、社会における力関係を利用して少数派を一方的に傷つけ、沈黙させるからだ。
どんな国でも完全な表現の自由は存在しない。タブーというものがある。児童ポルノであれ、ジェノサイド扇動であれ、社会の調和を乱す表現にはおのずと線引きがなされてしかるべきだ。
その際、あいまいな規定で規制するのは問題だ。明確かつ適切な境界線を引く努力を続けなければならない。
差別的な表現でも、聞いた人が気分を害するだけなら処罰の対象とする必要はない。だが、人間の尊厳を踏みにじったり、(特定の人種や民族グループについて) 「社会に居場所がない」などと公言したりするのは許されない。法規制の対象とするかどうかの判断は、そうした言動がどのような文脈でなされたかが大事だと強調したい。その国や地域における過去の歴史も判断の上で重要な要素となる。
人種差別を禁じる法を制定し、刑法や民法を組み合わせた法的枠組みを作る必要がある。刑法で処罰するのは最も深刻な場合に限るべきだ。
法規制が逆に社会的少数派の抑圧につながったり、正当な抗議の制限に使われたりするのも防がねばならない。そのためには、実際に法を運用する裁判官や警察への教育が非常に重要となる。国際的な人権基準を含む教育はメディアにも必要で、市民が言論によってヘイトスピーチに対抗するのも大事だ。法律を作れば問題が解決されるわけではない。そこから差別をなくす取り組みが始まるのだ。
ヘイトスピーチに対してどう対応していいのかと考えていた時、この記事に出会った。ヘイトスピーチの禁止は単なる「言論の自由」の規制ではない。多数派が力関係を利用して少数派を一方的に傷つけ、沈黙させるからだに納得した。

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