2012年8月17日金曜日

日本を追い込む5つの罠


 カレル・ヴァン・ウォルフレン(オランダのジャーナリスト)の「日本を追い込む5つの罠」を読んだ。彼の本ではベストセラーとなった「日本/権力構造の謎」「人間を幸福にしない日本というシステム」は以前に読んでいて面白かった。5つの罠の一つ「TPP」の章で、なるほどと思うところを紹介する。

TPP、この「政治的」なるもの
当初、経済関係のいっそうの緊密化をめざして、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランドやチリといった国々がTPPを結成したとき、この構想に弊害があるようには見えなかった。ところが関税撤廃という立派な目的を掲げたこの協定は、またたく間に当初想定されていたものとは異なるものへと変わってしまった。
ちなみに結成国がTPPについて話し合いをはじめた当時、アメリカには「アジア太平洋自由貿易圏」という独自の構想があった。つまりアメリカ政府は出来合いのTPPを採用し、みずからの目的を達成するためにこれを利用すればよかったのである。
次にアメリカはオーストラリア、ペルー、ベトナムやマレーシアをTPPに引き入れた。さらにアメリカ議会は韓国、コロンビア、パナマとの自由貿易協定を承認した。こうしてTPPはアメリカ企業がアジア太平洋地域を牛耳るという、アメリカ政府の夢を実現するためには欠くことのできないものとなった。
関税の引き下げや、完全撤廃の可能性、またいわゆる非関税障壁や、市場に部分的に残っている保護主義的な措置などがなくなる見通しは,たしかに魅力的であるに違いない。
だからこそ少なからぬ日本企業がTPPにメリットがあると感じるのだろう。しかもTPPは21世紀の主要な貿易の枠組みとしてさかんに宣伝されたことから、日本も韓国のようにこうした協定に参加しないと世界の歴史の流れから落伍することになるのではないか、と不安をかき立てられるのだろう。
しかしTPPの参加実現を推進しようとする日本の人々がいまなおこのように考えているとすれば危険である。彼らは警戒すべきである。
なぜならTPPの内実は言われていることとは違うからだ!市場が改善され、効率がよくなるという触れ込みではあるが、アメリカの交渉担当者たちが注視してきたのは労働法や環境法、知的財産法であった。市場改革が目的なら、こうしたことが優先課題になるはずはない。つまりTPPというのはビジネスや経済の現実とは無関係の、きわめて政治的なプログラムなのである。
アメリカ政府は帝国主義的な目的の実現をめざしている。当然TPPに参加した国々が対等な立場で会談するなどということは想定されてはいない。なぜなら多国間協定の場合、そこには支配的な地位を占める国が存在し、大抵、その国が利益の大半を奪ってしまうからである。
さらにこのような枠組みのなかでは、もっとも力ある国が国内事情を理由に、たとえばTPP協定によって生じた状況につけ入るなどして、参加国すべてが同意したとり決めに違反することさえある。
ここで指摘しておきたいのはTPPに関するあらゆる会議の場で行われている話し合いは、そもそも経済協定とはまったく関係がない、という点だ。つまりTPPとは政治協定に他ならないのである!
日本の政治家はこのような内容を本当に知らないのか、または知っていても言う事ができないシステムに組み込まれているのであろうか?

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