2012年8月27日月曜日

非公式権力


日本を追い込む5つの罠という本の紹介を以前したが、その中の3番目の罠の一部を紹介しよう。脱原子力に抵抗する「非公式権力」の中の一節である。 

原子力発電の分野での既得権者たちは、「原子力村」というどこかロマンチックな響きのあるあだ名で呼ばれる。彼らがどんな結びつきか、どのように行動するか、相互にどのようにかかわり合っているかは傍目にもはっきりと理解できる。それは確固たる機構といった様相を呈しているのである。
これまで数十年にわたり、原子力行政をつかさどる経済産業省内の資源エネルギー庁の幹部は、役所を引退すれば東京電力の副社長というポストを当てにすることができた。東京電力関連企業は100社を超える。さらに原子力発電の安全にかかわる公的機関、あるいは半官半民機関もある。この産業を監督する高官の多くは、天下りでこうした機関にポストを得る。
東京電力の社員に関して述べるならば、その労働組合は、日本の労働組合の全国中央組織・連合こと日本労働組合総連合会のメンバーである。連合は民主党に相当額の政治資金を寄付しており、そのトップの地位にある人々はときに民主党内閣の諮問機関のような役割を果たすこともある。他の電力会社の組合も原子力発電についてのプロパガンダを行うが、それは彼ら面々のポストがかかっているからだ。
しかしこうした状況のすべてが民主党政権にとっては、原子力エネルギー産業の影響力を削ぐような政策を打ち出そうにも、その妨げとなっている。
産業団体ももちろん既得権側に立つ。原子力村は経済団体連合会に多くの役員を送り込んでおり、金融・製造業界の大手企業もまた、原子力エネルギーが日本の将来の主要な電源であり続けるものと見込んできた。
原子力行政に追従するトップクラスの大学に勤務する教授や研究者たちは、原子力村に「科学」を持ち込むが、それは学者たちにとっては資金提供を確実にする方法のひとつである。また原子力関連企業や機関に、アドバイザーといった居心地のいいポジションを得ることも期待できる。
東京大学の教授たちは、東京電力の主張の熱心な支持者として悪名高いが、それは主流派メディアも同じである。記者や編集者たちが直接、あるいは記者クラブを通じて自分たちが報道する対象と密接な関係を築くという、望ましからぬ伝統はいまなお続いている。
かくして電力10社は競争相手もなければ、宣伝活動も必要ないままに、市場を地域割りで独占できるのである。ただしこの業界は日本では最大の広告主のひとつでもある。
私達は、この「非公式権力」を弱めるために、代替エネルギー、特に「太陽エネルギー」の利用に、本気で取り組む必要があると考える。
 

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