2012年10月3日水曜日

99%の貧困


世界の99%を貧困にする経済の紹介を以前もしたが、もう一度、紹介する。少々難しい文章であるが、アメリカの今を理解するために、読んでみて欲しい。

今日の貧困者が明日の富裕者になる可能性があるなら、もしくは、真の機会均等が存在しているなら、不平等からもたらされる悪影響は、もっと小さくなっていたかもしれない。ウォール街を占拠せよ運動が不平等の拡大に注目をひきつけたとき、右派はまるで自慢するかのように、結果の平等を重んじる民主党とちがって自分たちは機会均等に全力を傾ける、と反論した。
ウィスコンシン州選出の共和党議員で、下院予算委員長を務めるポール・ライアンは、アメリカの将来を左右する予算上の意思決定に責任を負っているが、彼の話によれば、民主党と共和党の大きなちがいは、「今でも機会均等を信じているか、機会均等から離れて結果の平等を重視しているか」という点にある。ライアン委員長はさらに、「所得の再分配ではなく所得間の移動性に焦点をあてよう」と付け加えた。
この考え方には、二つの事実誤認がある。第一に、結果の平等″など存在しないと主張する一方で、機会均等は実現されていると言っていること。1章で述べたとおり、この認識は正しくない。ここではジョナサン・チャイトの警句を引用しょう。「事実は愉快な空想を邪魔してはいけないことになっている」
第二の事実誤認は、累進課税の推進派が″結果の平等″ を主張している、とみなしていることだ。チャイトが指摘するように、民主党は結果の平等″ を求めているのではなく、「所得格差の急拡大を放置したまま、政府の手でほんの少し改善を加える政策」を主張しているだけだ。
おそらく、わたしたちが最も重視すべきなのは誰もひとりでは成功できないという点だろう。途上国には利発で勤勉で活動的な人々が多くいる。彼らが貧困層から抜け出せないのは、能力や努力が足りないからではなく、うまく機能していない経済の中で働いているからだ。
何世代にもわたる国家の集団的努力の結果、アメリカには物理的インフラと制度的インフラが整えられ、すべてのアメリカ人がこれらの恩恵にあずかっている。懸念すべきなのは、上位一パーセントの人々が既得権益にしがみつき、法外な取り分を主張しつづける中で、システムそのものの破壊がもくろまれることだ。
本章で説明してきたのは、不平等がアメリカ経済―― 生産性と効率性と成長性と安定性――をむしばみつづけ、その高いコストをわたしたちが支払わされているという点と、少なくとも現行の不平等水準を緩和させれば、その利益はコストを大きく上回るという点だ。本章では、不平等の悪影響が広がる経路も数多く特定した。不平等の拡大が経済成長を阻害するという結論は、さまざまな国々を長期間観察した研究によって実証されている。
上位一パーセントが社会に押しつけている最大のコストは、フェアプレーと機会均等と連帯感を重視するアイデンティティがむしばまれることだろう。アメリカは長きにわたって、全員に前進のチャンスがひとしく与えられる公正な社会を誇りとしてきた。しかし、前述のとおり、今日の統計値からはまったくちがう実態が浮かびあがってくる。下層はもちろん中層の人々でさえ、上層までたどり着ける確率は低く、アメリカの数字は、多くのヨーロッパ諸国を下回っているのだ。アイデンティティの喪失と経済の弱体化以外にも、不平等のコストは存在する。民主主義が危機にさらされることだ。
これから、大統領選挙が戦われるが、民主党のオバマでさえ、今までにアメリカが作り上げてきた民主的なシステムの崩壊を止めることはできていない。アメリカは何処へいくのだろうか。ましてや、アメリカに言いなりの日本は、何処へ行こうとしているのであろうか。

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