2012年10月4日木曜日

脳を創る読書

雑誌「ターザン」の書籍紹介欄に載っていた「脳を創る読書」著者:酒井邦嘉(なぜ紙の本が人にとって必要なのか)紹介文章をそのまま転載します。

突然ですが皆さん、最近本を読んでいますか? 「そういや移動中もスマホばかり見ているし、全然読んでないかも」って自覚がある人はぜひご一読を。東京大学大学院で言語脳科学を教える酒井邦嘉さんによる「脳を創る読書」だ。
この本は昨今進む電子書籍化の傾向に対し、読書によるさまざまな効果や、読書でしか得られない知的成長プロセスといったメリットを脳の特性なども交えて解説しつつ、「なぜ紙の本が必要なのか」をあらゆる方向から説いている。
「電子化は書籍の分野に限らず教育現場においても進みつつあるのが現状です。もちろんそれらが便利なのは承知の上ですが、特に学生の間でその便利さに頼りすぎている傾向と、そこから生じている弊害を感じていましたので、ひとつの問題提起として書きました」
たとえばレポートを書こうとする。昔なら本や辞書を何冊も開いてメモをとり、そこから改めて自分の手でまとめていた。仮に一部を書き写すにせよ、それは手作業だったのだ。しかし今はどうか。参考資料や文章はネット検索すれば瞬時に、ただで手に入る。しかもコピー&ペーストを繰り返して切り貼りすれば手軽にそれらしいものができあがる。さらに問題なのは、手軽さゆえにその行動に罪悪感を感じにくい点だという。
「ネット情報やソフトに頼るばかりで、得た情報を咀嚼し、分析する作業を怠る傾向が特に若い世代に強く見られます。ネットは検索で膨大な情報にアクセスできますが、言ってみればそれは玉石混淆です。自らが能動的に評価できない限り、真偽不明な事柄まで取り込んでしまい、検証することなしにそれを正しいと思い込んでしまう。これが一番怖いんです」
ネットの普及以来「調べる=ネット検索する」になった感がある。検索で調べ事の答えに触れただけでわかったつもりになっても、実際には身についていないのだ。
「電子書籍や電子教科書も同様で、情報アクセス手段としては有効ですが、何かを考えるためのツールとしては未熟です。やはり手で文字を書くところに立ち返らないと、物事を理解したり深く考えるといった脳の働きが発達しません。だから幼少時の読み書きの練習が大事であり、電子教科書ではそこが軽視される恐れもあるんです」
電子書籍に違和感を拭えないという人は多いだろう。画面上でページをめくるような機能があっても、それはあくまでバーチャルなもの。ひと言でいえば本を読む感覚とは程遠いのだ。そのあたりの違和感を、酒井さんは本の「様式感」や「量的手がかり」の欠落といった表現でうまく解説する。
「紙の本ならページをめくり、行き詰まったら何ページも戻って読み直すという作業が瞬時にできます。また気になる箇所には線を引き、付箋を貼るのだってすぐです。実は脳の識別や特徴抽出の能力は、今の電子技術よりはるかに高性能なのです。また、読書での理解度も記憶に大きく関係することがわかっています。こうした能力を電子書籍化と共に簡単に捨て去ってしまっていいのでしょうか」
酒井さんは決して電子書籍が悪いのではなく、使い分けが大事と説く。本書は大きく変化しつつある人と本の関わり方について、いろいろと考えさせられる一冊だ。
私は紙の本に愛着がある。筆者と同じような考えを持っている。付け加えるならば、紙の本で読んだものの感想や、要点を自分の頭で考え、まとめる作業をするようにしたい。「脳を創る読書」とはネーミングがいい。早速購入して読みたい本である

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