2012年12月29日土曜日

王政復古


 鹿島茂氏の「引用句辞典」は以前にも紹介したことがある。今回は安倍政権をナポレオン時代の「王政復古」にちなんで読み解いている。以下、概略を紹介する。
王政復古とは、本質的に「他に選択肢がない」から、一度捨てたものをもう一度拾おうとする「しかたなし」の選択なのである。しかし、「しかたなく」選ばれた者たちがそうは思わないというのもまた王政復古というものの本質である。
さて、日本でも王政復古である。三年前、「歴史的敗北」を喫して歴史の表舞台から去ったと思われた自民党が「歴史的勝利」によって政権の座に戻ってきた。その前の小泉政権による郵政民営化選挙が自民党の「歴史的勝利」だったのだから、「歴史的」という形容詞は三、四年ごとの総選挙のたびに繰り返されるわけで、本来最大級であるはずの形容詞もずいぶん安っぽい使われ方をするようになったものである。むしろ、「定例の」とでもいいかえた方がいい。
これは二大政党下における小選挙区制では、ある程度、予想されたことで、日本のように無党派層が最大のパーセントを占める国においては、政権党に失政があって民心がどちらかに少しでも振れれば、勝敗はオセロ・ゲームのようにひっくり返り、「オール勝ち」か「オール負け」になるほかはない。自民党は敵失で勝利を得ただけなので、安倍政権がすこしでもヘマをやらかせば、内閣支持率はすぐに急降下し、参議院選挙までもつかどうか。
だが、「王政復古」して政権に戻った当事者たちはそんなふうには考えないだろう。三年前に国民に見放されて惨めに政権の座から滑り落ちた時の反省などケロリと忘れ、国民は自分たちを強く支持してくれていると思い込んでいる。
つまり、彼らは自分たちが政権を失った理由について「なにひとつ学ばず」、政権にあった間にさんざんに享受した特権や利権のことは「なにひとつ忘れなかった」のである。いずれ、「人からコンクリートへ」というスローガンのもと国土強靭化計画が本格化すれば、膨大な利権に族議員たちが群がって、配分された巨大な予算を巡って分捕り合戦が繰り広げられることだろう。
ようするに、自民党はなにひとつ変わらず、昔の自民党が「昔の名前で」戻ってきて王政復古となっただけなのである。
以前、安倍晋三首相が改憲目的で結成した「創生日本」というグループは「戦後レジームからの脱却」と言っていた。その時のメンバー6人が今回の内閣に入閣している。極めて危険な内閣である。来年が正念場である。いい年にしたいものである。

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