2013年3月8日金曜日

正しい情報


東洋経済の連載「知の技法」(佐藤優)の第284回は「正しい情報を身につけるための技法」は参考になる。以下、概要を紹介する。
「どうやれば正しい情報を得ることができますか」という問に対して
率直に言って、この質問に対して答えることはできない。まず、質問者がどのような情報に関心を持っているのかがわからない。さらに、「正しい情報」を得るために、どの程度の時間と費用をかける用意があるかがわからない。だから、具体的な回答をすることは不可能なのである。
結論を先に述べるならば、新聞を正確に読み解く技法を身に付ければ、かなり「正しい情報」を身に付けることができる。池上彰氏の手法は、新聞を丁寧に読み解くという、戦前、戦中の日本陸軍参謀本部や満鉄調査部で行っていた文書諜報の伝統を継承している。だから、筆者は、情報収集に関心を持つがっついた若手ビジネスパーソンには、池上氏の手法を「盗む」ことを勧める。
「池上氏の説明は、教科書や新開に書いてある通説ばかりで、深みがありません。もっとディープな情報を知りたいのです」ということを言う人がよくいるが、このような発想だといつまでも情報力が身に付かない。
深く専門的な情報は、教科書に書いてある通説を熟知している人しか得られないのである。耳学問でいいかげんな知識しか持っていないと大きな過ちを犯すことがある。
ネットで人気でも国民の支持があるとは限らない
さらに新聞・テレビなどの既成メディアとインターネットの関係に関する池上氏の洞察は優れている((ネットで人気だからといって、国民的な支持率があると勘違いしないようにしてください。小沢(一郎)さんの熱狂的な支持者が50人いたとして、その50人が「小沢さんはすごい」と1日に3回ぐらいずつネットに書き込んだとしたら、どうなるか。とても盛り上がっているように見えますね。しかし現実は違う。
その意味で残念なのは、ネット利用者が、自分がネットを利用して感じている感覚と世論調査がズレて、「マスメディアは偏向報道している」「世論調査も自分たちにとって都合のいいようにしているだけだろう」と言い出すことです。これはとても残念なことであり、不健全な考え方です。日本のマスメディアは、世論調査にバイアスをかけるような、つまらないことはしません。ネットの利用者は、まず、「自分たちの方が少数派なんだ」という自覚を持つことが大事です。)
池上氏の考察は正しい。ここでなぜ、池上氏が事態を客観的に認識することができるかについて考えてみょう。多くの人が「ネット世論とマスメディア、特に新開の論調が乖離している」という印象を漠然と抱いているのに対し、池上氏はそれをまずいくつかの小命題に分ける。具体的には、「小沢一郎氏に対する評価について、ネット世論はどのように形成されるか」「新開やテレビの世論調査は、統計学的に見て妥当な方法でなされているか」「新聞社やテレビ局が編集権を行使して世論調査の結果を歪曲することがあるか」「新聞社、テレビ局の社論は、世論調査を無視して形成されるか」などの小命題に分けて、それぞれ答えを出したうえで、それを総合して池上氏の見解を打ち出しているのである。池上氏の問題解決へのアプローチは、近代の知識人が取る定石である。
今、ネットの情報をあたかも真実のように捉えがちである。日本では、まだまだネットの過激な情報はマイナーであることを肝に銘じておくべきである。新聞の情報が全て正しいわけではない。しかし、新聞の情報をしっかり読まないで、ネット情報だけで判断すると大きな過ちを犯す。

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