2013年8月9日金曜日

成長より分配



平和新聞にエコノミストの浜矩子さんの記事が載っていた。「アベノミクス」をわかりやすく解説しているので少々長いが紹介する。
参院選で安倍自民党が最もアピールしたのが経済政策でした。「アベノミクスは現実から遊離した虚構の世界」と指摘するエコノミストの浜矩子さんに、安倍政権の経済政策の問題点について聞きました。
「アベノミクス」は、早くも化けの皮が剥がれてきています。
「アべノミクス」とは、要は「金融バブル」を作り出して、それを実物経済に波及させていこうとするものです。バブルで株価が上がれば、貯蓄から投資へとカネが回るようになり、浮かれムードが世の中に広がって人々のカネ使いも派手になり、消費が増えて物価も上がっていくというシナリオです。
ただ、バブルになれば、経済の力学としては金利も上がります。日銀は、せっかくの浮かれムードに水を差す金利上昇を回避するために、金融緩和を行ったり、国債を猛烈な勢いで市場から買い上げたりしましたが、思うように金利上昇を止めることができていません。
また、バブルにかかわった一握りの人たちによる高額商品や外食産業などでの消費は確かに伸びていますが、そのほかの個人消費や企業の設備投資は冷え切ったままですし、地方経済の疲弊も相変わらずです。
安倍政権は、彼らのいわゆる「3本の矢」なる構想を打ち出し、まず「第1の矢(異次元金融緩和)」と「第2の矢(公共事業など積極的な財政出動)」で景気付けをしておいて、そこに「本丸」である「第3の矢(成長戦略)」を打ち込んで、経済低迷から脱却するのだといっていました。
しかし、6月5日に鳴り物入りで発表した「第3の矢」は、市場からは「迫力不足」と評価され、株価も急落しました。これに慌てた安倍政権は、それまで「3本の矢」と言っていたにもかかわらず、突如「第4の矢もある」と言い出して、秋に企業減税をやると約束したのです。安倍政権はもはや、市場によって「人質」にとられているも同然です。政策は、完全に市場にコントロールされてしまっていると言えるでしょう。
金融バブルが暴走する危険
参院選で自民党が圧勝した場合、安倍政権の政治力は強化されますが、経済はそう簡単に彼らの思惑通りにはいかないでしょう。そこが、政治と経済のせめぎ合いの面白いところです。
いつまでも期待に応えるような実物経済への効果が出てこなければ、期待は徐々にしぼんできます。そうなるまいと、さらに金融緩和を行えば、投機筋は日本の株をいっきに買い上げ、株価は上がるでしょう。しかし、彼らは売るために買うのです。売り局面になればいっきに売るので、株価は急落し、一般投資家は大損をすることになります。このような実体のないマネーゲームで右往左往をくり返すことが、目に見えています。
もしバブルが過激に暴走し始めた時、政府や日銀は手際良く風呂敷をたたむことができるのでしょうか。それができなかった場合、その「洪水」に飲み込まれるのは私たち国民です。
足りないのは成長より分配
では、日本の経済どうすればいいのか。私は、今の日本経済に必要なのは、「成長」よりも「分配」だと考えます。
まず、これだけ経済が豊かで成熟している国で、成長軌道が緩やかになるのは自然なことです。ただ、これまでの日本人の努力で高く積み上がった富が、非常に偏在しているのが問題なのです。貧困や地方経済の疲弊といった問題は、成長が足りないから起こっているのではなく、足りないのは分配です。むしろ、偏在した富をより平等に分配することで、結果的に成長率を高めることになるかもしれません。
日本人は高度経済成長期、夏は2カ月間バカンスをとるフランス人や田舎に別荘を持つイギリス人を羨ましく思いつつも、 「彼らは過去の蓄えがあるからできるんだ。蓄えのない日本は、成長の一輪車経済。止まったら倒れるんだ」と言って懸命に働いてきました。
その努力で富を蓄積し、これだけ豊かな国になったのです。これからの日本は、がむしゃらに経済成長ばかり追求するのではなく、過去の成長の果実である巨大な富を別の“豊かさ”に花開かせる段階にきているのです。
国家のために国民ありき
企業がグローバル展開している状況の下では、企業が栄えることが、国民が豊かになることや地域経済が潜性化することに必ずしも直結しなくなっています。そういう中で、国民を「顧客」とする「サービス事業者」として、国家はどのようにその顧客満足度を高めるかということが問われています。
しかし、世界ではグローバル経済の下、国家の台所事情を支えるために国民が痛み付けられるという、本末転倒のことがたくさん起こっています。その中で、国民国家の政府とはいかにあるべきかという根源的な問題が突きつけられているのです。
安倍政権の発想は、どうも国家のために国民ありきで、国家が「世界一」になるために役に立つ国民探しをしているように見えます。(談)
成長より分配、富の均等を「アベノミクス」は忘れている。

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