2014年8月12日火曜日

21世紀の資本論



 東洋経済に紹介されている、「21世紀の資本論」の著者トマ・ピケティー氏のインタビュー記事を紹介する。この本はまだ日本語に翻訳されていない。翻訳されたらぜひ読んでみたい。
本書では、三つの重要な点を指摘しています。①経済成長率よりも資本収益率が高くなり、資本を持つ者にさらに資本が蓄積していく傾向がある、②この不平等は世襲を通じて拡大する、③この不平等を是正するには、世界規模で資産への課税強化が必要だ、ということです。
不平等の是正には資産への累進課税だ
 ―不平等の維持を食い止めるためには、どんな政策が必要ですか。
理想的な方法は資産への累進課税だ。固定資産税など、すでに存在している税の枠組みを利用して課税強化すればよい。徴収方法は必ず累進的にして、課税の対象は資産・負債の差し引きを考慮した純資産で考えるべきだ。
「資産の集中を制限するとイノベーションが阻害される」という意見もあるが、それは誇張だ。ビル・ゲイツは30年前に米マイクロソフトを設立したが、現在の数百億㌦の資産を事にするために起業したわけではない。仮にそれが5億ドルだったとしでも、よい仕事をしたはずだ。
資産への累進課税は、ある程度までは国内で完結する。ただし最も大きなレベルの資産については、国際的な協調が必要になるだろう。
― もし資産への累進課税が実現したとすれば、富裕層はどう反応するでしょうか。
課税は寄付とは違う。民主主義に基づいて多数決で決まり、全員に影響する。富裕層が賛成する、しないは関係ない。民主杉の力によって富裕層に法の規則を与えることは可能だ。
たとえば5年前まで、厳格な守秘義務を持つスイスの銀行は顧客情報の開示などしないと誰もが思っていた。だが、米国が(脱税幇助だとして)制裁を加え、スイスの銀行はやり方をがらりと変えた。
この例が示すのは、明確な制裁をもってすれば前進があるということだ。この点について私は楽観的で、結局は民主主義が透明性を確保する方向に動かすと思っている。
民主的な仕組みを論じるに当たって、金融の不透明性は非常に問題だ。多くの資産が隠され富裕層が税を逃れているのに、サラリーマンや中間層、貧困層に増税を行うことはできないはずだ。
―このインタビュー前に、日本の経済成長率や人口動態などのデータをあらためて見ていただきましたが、日本についてはどうご覧になりますか。
日本のケースは私の主張を裏付ける端的なものだ。欧州と似ているが欧州よりも極端なケースになっている。1970年から2010年までの期間で見ると、国民所得に対する民問資本の割合は、戦後の約3倍から、現在では6-7倍になっている。この変化はイタリアや英国、フランスとかなり近い。経済成長がスローな国では資産の蓄積がより大きくなる。
日本社会で注目すべきもう一つのポイントは人口動態だ。人口が増えないどころか減少している。
― 人口減少社会は、どのような不平等を生むでしょうか。
人口が減る社会は、時代を経るにつれ大きな不平等を生むリスクを抱えている。子どもの数が少ない社会では、相続財産、つまり過去に蓄積された富の剖合が大きくなる。
夫婦に子どもが10人いるなら相続はそれほど重要ではない。1人が継ぐ財産の量は少ないからだ。子どもは自分で仕事をして、自分で富の蓄積をすることになる。
一万で、人口減少社会では前世代が形成した富をその後の世代が引き継ぐので、富の蓄積がどんどん進む。夫婦に子どもが1人しかいなければ、両親から財産を受け継ぐ。双方の親に富がなければ、どちらからも財産を継承できない。こうして、世襲によって受け継がれる不平等がとても大きくなる。仕事で成果を出しても報われないリスクも高まるということだ。
人口減少と不平等という視点は成程と思わせる。

 

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