2014年8月28日木曜日

ウクライナ問題


毎日新聞のコラム「海外からの発信」は以前にも紹介したが、いい記事が多い。今回は「ウクライナ」問題である。
対蕗制裁は逆効果
トニー・ブレントン元駐ロシア英大使
ウクライナを巡るロシアと欧米の対立は、マレーシア機の撃墜でさらに深まった。欧米の制裁にもかかわらず、ロシアはウクライナ東部の親ロシア派武装集団を支援する姿勢を崩してていない。この状態は、緊張を高めるばかりで極めて危険だ。緊張緩和には、制裁強化ではなくロシアとの交渉しかないと思う。
まず、ロシアのクリミア半島編入について、ロシアの防衛的側面が強いことを強調しておきたい。ソ連崩壊(1991)後、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)拡大の脅威にさらされてきた。エリツィン露大統領(当時)90年代、クリントン米大統領()から「NATOは拡大しない」との約束を得たと考えていた。
だから99年にポーランドなど(東欧3、カ国)NATOに加盟したとき、ロシアは裏切られたと感じた。ソ連崩壊後、NATOに加盟した国は計12カ国だ。NATO拡大が続く中でウクライナ危機は発生した。ロシアにとってウクライナは兄弟国だ。特にクリミア半島は54年までロシア領だった。これ以上のNATO拡大を回避するには、クリミア編入しかないとロシアは考えた。
ロシアはウクライナ東部にまで軍事侵攻する計画はないはずだ。ただ、親露派武装集団への支援を中止することもできない。親露派を見捨てることは、プーチン大統領にとって国内での威信を大きく低下させることになるためだ。そのため欧米が制裁を強化しても、ロシアは親霜派支援を変えていない。
マレーシア機撃墜で欧米が対露制裁を強化したのは理解できる。多くの自国民の命を奪われた西側諸国には、制裁強化以外の選択肢はなかった。ただ、制裁は逆効果であることも知るべきだ。制裁によってロシア国内では愛国主義が高まり、西側への敵意が強まった。ロシアを民主的な国にすることの妨げとなった。
ロシアには今、民主主義や法の支配など西側の価値観を知る中産層(ミドルクラス)の市民が約4000万人いる。たぶん、欧州で最も大きな中産層を持つ国だ。
長期的には西側諸国は、ロシアとの貿易を進め、教育や社会的な交流を深めるしかないだろう。自由や民主主義の重要性をロシア市民に知ってもらうことでロシアを変えることが得策だろう。
日本の対中国、対韓国への対応も同じような事が言える。自己満足だけの対応は外交とは言えないのである。

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