2011年8月25日木曜日

マルサスの「人口論」

毎日新聞の「引用句辞典」(鹿島茂)は示唆に富む記事が多いので、愛読している。今回は「マルサス」の人口論という本から、興味深い提案をしている。マルサスは本の中で、第一に「食料は人間の生存にとって不可欠である」第二に「男女間の性欲は必然であり、ほぼ現状のまま将来も推移する。と言っている。

第一原理はそのままだが、「男女間の性欲は必然であり、ほぼ現状のまま将来も存続する」という第二原理は、マルサスの人間観察が甘かったことを物語っているのである。つまり、衣食足りて、社会が豊かになった段階ではたしかにマルサスの言った通り、人口は増大するのだが、社会がそこからさらに豊かになり、衣食が足りすぎると、「男女間の性欲」は必然ではなくなり、人口は減少に向かうということである。
では、社会が豊かになりすぎると、なぜ「男女間の性欲」は必然ではなくなってしまうのだろうか?男女とも高学歴化することによる。高学歴化は、中産階級が富裕化レースに競り勝とうとして学歴獲得に乗り出すことに始まるが、この傾向が下層中産階級にまで波及すると、事態は決定的な段階を迎える。一般的に、大学生でいる間、人はセックスはしても結婚は考えないものである。だから、大学への進学率が上がれば上がるほど、結婚年齢は後ろ倒しにされ、理の当然として、少子化現象が発生する。さらに、大学を出たのなら、そこで得た知識を生かしてバリバリ働きたいと思うのが人情である。 
必然的に、その間、結婚と子づくりは延期される。もっとも、男子の大学進学率だけが上がっている段階では、合計特殊出生率の落ち込み幅は大きくはない。だが、高学歴化が女性にまで及ぶと、少子化のカーブは急勾配になる。女性が大学を出てフルタイム労働に従事し、出世競争で男性に競り勝ち、なおかつ三人以上の子をもうけるということは、たとえ将来、出産・子育て状況が劇的に改善されたとしても困難だからである。
最高に頑張っても二人が限度だろう。したがって、女性の高学歴化と社会進出が止まらない限り、民主党がマニフェストを貫徹して子ども手当の全面実施に踏み切っていたとしても、出生率が劇的に回復することはありえなかったにちがいない。
しかし、アフガニスタンのタリバーンのように女性の高学歴化と社会進出を「禁止」するということは社会の進化を止めるに等しい不可能事である。となると、残るはこれしかない。大学にも保育園を併設し、学生結婚、院生結婚をどんどん奨励することである。 
子どものいる大学生・院生には手厚い奨学金を支給する。その上で、企業には子どものいる大学生から優先的に採用することを法律で義務づける。就活の前に婚活、さらには「子活」となること必定である。
言っていることはかなり乱暴であるが、面白い提案ではある。

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