2013年11月7日木曜日

被爆労働

 月刊誌「世界」10月号に小出裕章氏のインタビュー記事が載っている。「福島第一原発はどうなっているか」の中で、“被爆労働は誰が担うのか”で以下のように言っている。
   被曝労働を誰が担うのか
   現場で収束作業にあたる作業員の方々の被曝線量が日々、積み重なっています。被曝低減のために何か必要でしょうか。
   小出 基本的には被曝の低減は難しいと思います。広島に落とされた原爆の何千倍、何万倍という放射性物質を閉じ込めようという作業です。しかし、先ほどもいいましたが、熔け落ちてどこにあるかわからない炉心を掴みだそうとするような選択をしてしまうと被曝量が膨大に増えてしまうので、そうした選択はするべきではないでしょう。
   汚染水問題を乗り越えるために、私は地下に遮水壁を作ることを提案していますが、その建設のためにも被曝は避けられません。汚染水をめぐっても作業員の被爆は増えています。被曝の避けようがない事態が今後もずっと続くでしょう。ですから、日々、その作業でどれだけ被曝するか、別のやりかたにすれば低減できるのか、 一回一回考えながら、少しでも被曝を減らしていくしかないでしょう。
   考えなければいけない問題は他にもあります。現在、被曝しながら作業をしているのは、 10次にも及ぶという下請け・孫請けの労働者です。その人たちの被曝管理がきちんとできているなどということは,私にはとうてい考えられません。公表されている数字よりもはるかに多い被曝を労働者はしていると思います。被爆線量をごまかせという指示を会社が出し、線量計に鉛のカバーをつけて被曝量を低く見せかけるということが起きました。雇う方にしてみれば、被曝量が低減きれば作業員を長く働かせることができます。しかし、問題は働く側の方です。現在の法律では、福島第一原発の事故収束に従事する労働者は作業中の合計で100ミリシーベルトの被爆まで許されることになっています。しかし、その100ミリシーベルトの被曝に達してしまうと、5年間、原発の仕事に従事することはできなくなります。そうなると、生活ができなくなります。労働者自身が被曝線量をごまかす、そういうところに追い込まれています。それがもっとも根本的な問題で、事故収束に向けては被曝そのものは避けられないけれども、このような構造はなくすべきです。
   一部の人に被曝のしわ寄せが行くようなありかたを改めると、今度はいまよりも人手が必要になります。被曝をごまかしていた分を別の労働者が担うことになります。チェルノブイリ事故の際には、60万から80万人といわれる労働者が収束作業に従事しました。その多くは軍人もしくは退役軍人です。そのほかにも多くの技術者や労働者が参加しています。チェルノブイリでは一つの原子炉が事故を起こしたのですが、福島では4つの原子炉です。これからどれだけの期間、収束に向けた作業を続けなければならないのか、どれだけの人数の労働者が必要になってくるのか、考えただけでも気が遠くなります。収束作業を続けていくことができるのか、不安になります。
   やはり、私も含め、原子力の現場にいた人間で、事故に対してそれなりに責任のある年齢の高い人間が被曝作業に従事すべきだと思います。私も参加していますが、若者に被曝させないために退役世代が中心になって呼び掛けている福島原発行動隊というような人たちが被爆作業に当たっていくことが必要だと思います。多くの日本人、特に責任のある人たちは率先して被曝労働を請け負ってほしいと思います。
   福島原発行動隊という提案はすごい。手厚い保障をしながら、責任ある人たちが請け負って欲しい。決して若い人にやらせてはいけない。

0 件のコメント:

コメントを投稿